バイアス(先入観)とは
バイアス(先入観)とは、「斜め」や「偏り」といった意味で、転じて「先入観」という意味の言葉です。
バイアス(先入観)があると、偏ったものの味方になり、物事を正しくありのままにとらえることができなくなってしまいます。
知識は、問題解決のために必要不可欠のものです。
知識が多くあればあるほど、問題に対して、色々な方向からアプローチできるようになり、より問題解決できる確率が高まります。
「知識」はロジカルシンキング(論理的思考)をしていくうえで必須のものですが、バイアス(先入観)のかかった知識をいくら大量に持っていても意味がありません。
間違った前提のもとに、ロジカルシンキング(論理的思考)を積み重ねていくと、高確率で間違った結論に至ってしまいます。
間違った知識をどう組み合わせていっても、正しい過程で、正しい結論に至ることはできません。
間違った知識を用いても、偶然、正しい結論にたどり着くことはありますが、それでは論理的思考能力は伸びません。
物事をあるがままに捉えて得られた正しい知識を元に、論理的な思考をすることで、問題解決が可能となるのです。
そのため、知識を得る時には、常に自分にバイアス(先入観)がかかっていないか注意しながら学習していく必要があるのです。
正しい知識を得るための方法は、「因果関係」のカテゴリーで解説しており、正しい知識を増やすための方法は「知識」のカテゴリーで解説しています。
「バイアス」のカテゴリーでは、バイアスがどのようなメカニズムで生じるのかや、バイアスの種類などを解説します。
どのようにしてバイアスが生じるのかを前もって知っておくことで、バイアスを予防することが可能となります。
バイアス(先入観)はなぜ生じるのか?
では、なぜバイアス(先入観)が生じるのか、についてここでは解説していきましょう。
バイアス(先入観)は、「知識」によって生じます。
人生で様々なことを経験していく中で、いろいろな間違った知識を記憶していきます。
その間違った知識が、バイアス(先入観)を生む元となるのです。
人間は、意識していても、いなくても、日常で様々な情報にさらされています。
そのため、自分で意識的に情報が正しいかどうかを判断して記憶していかないと、脳内にどんどん間違った知識が増えて行ってしまいます。
そしてそれらの間違った知識からバイアスが生じてしまうのです。
情報が正しいかどうかの判断基準はたったひとつしかなく、それは「因果関係が正しいかどうか?」ということです。
このことについては、「因果関係」のカテゴリーで解説しています。
情報を漫然と摂取しているだけでは、どんどん、間違った知識が脳内に蓄積されていってしまいます。
年を取ると、頑固になると俗に言われるのは、年を取るにつれ、間違った知識が脳内を多く占めるようになっていき、
バイアスが強くなっていくからです。
また、記憶力の良い人は、バイアスが強くなりやすいので注意が必要です。
記憶力の良い人で、因果関係をチェックする習慣が無い人は、意識して記憶しようとしていない情報でも、
記憶力が良いために脳に刻まれてしまいやすいからです。
情報を摂取する時は、その都度、因果関係をチェックし、間違った知識を脳に入れてしまわないようにしましょう。
クリティカルシンキング~バイアス(先入観)を防ぐ方法
バイアス(先入観)のかかっていない知識を得るために必要なのが、クリティカルシンキング(批判的思考)という習慣です。
あらゆる情報に対して、本当にそれが正しいのか、と批判的な思考を働かせることです。
本に書かれている情報や、ネット上の情報、知り合いから得た情報などをクリティカルシンキングせずに無批判に記憶していくと、バイアス(先入観)にまみれた知識で脳内が満たされてしまいます。
クリティカルシンキングとは、情報をただ批判するという意味ではなく、本当にその情報は正しいのだろうか?ということを常に自分に問いかける習慣です。
あなたは日々、何かしらの知識を得ていることと思います。
人との会話、読書、インターネット、テレビ、など様々なところから情報を得ていると思います。
しかし、その中にはかなり多くの間違いが含まれています。
情報が与えられた時には、必ずその情報が本当に正しいか調べるようにしてください。
情報が正しいかの判断基準は、ただ一つ、理由が正しいかどうかです。
「?は~だ」という主張に出会ったら、その情報を鵜呑みにするのではなく、クリティカルシンキングを行い、必ずその主張の理由を考えてください。
そして、本当にその主張が正しいかを判断してください。
決して、偉い人が言ったから、自分の好きな人が言ったから、といった理由で主張を信じないでください。
「過去に例が無いから」
「みんなそうやっているから」
「偉い人が言ったから」
等といった理由で、間違った情報を無意識に頭に蓄積している人が非常に多いのです。
間違った情報が蓄積されればされるほど、思考時にバイアス(先入観)が生じやすくなり、ロジカルシンキング(論理的思考)ができなくなるのです。
どんなささいな情報についても、常に理由があるかどうか、その理由は正しいかどうかをチェックするようにしてください。
さらに、その理由が全ての理由なのか、ということをチェックしてください。
ある理由から、結論が言えても、その他にも結論に至る理由があるならば、その主張は必ずしも正しいとは言うことができません。
バイアス(先入観) 隠れた前提 ~言葉の定義の違い~
隠れた前提とは、主張の中ではっきりとは示されていないが、主張の根拠となっているもののことです。
バイアス(先入観)によって隠れた前提が生じ、論理的な議論が妨げられることがよくあります。
隠れた前提は、多くの場合、情報発信者が、情報発信が冗長になるのを防ぐために生じます。
これが常識だろう、というバイアス(先入観)から、わざわざ説明していたら面倒という思いから情報を省略することで、議論が上手く行かなくなってしまうことがあります。
隠れた前提が多いと、論理が飛躍しているという印象を情報受信者に与えてしまい、上手く意見が伝わりません。
言葉の定義をどう認識しているか、によって、バイアス(先入観)が生じることがあります。
同じ言葉でも、人によって捉えている意味には微妙な差異が存在します。
その差異がバイアス(先入観)となり、情報を得るときの理解の妨げになったり、説得するときの妨げになったりしてしまうのです。
情報を得るときに、自分の言葉の定義で理解してしまい、上手く理解できない、
自分の言葉の定義で相手を説得しようとしても、相手にとっては違和感があり、説得することができない、
などといったことが起こるのです。
ですから、言葉から情報を得る時には、言葉の定義が自分の言葉の定義と同じであるか注意しながら情報を得る必要があるのです。
また、
「AかつB」は、AとB両方とも
「AまたはB」は、AかつB、Aのみ、Bのみ
「AもしくはB」は、AかBのどちらか一方
という意味で正確には使います。
これらの論理でよく使用する言葉以外の一般の言葉でも、「定義」には常に注意してください。
論理的な思考をする時には、自分では定義に沿った用法で正しく言葉を使うようにすることが大事です。
ただし、言葉を使う側の人間が、正しい用法で使っているとは限らないので、注意が必要です。
文章を読んだ時に使われている言葉が、書き手が正しい用法で使っていない、という場合もしばしばあります。
また、こちら側でこれらの言葉を正しく使っても、相手が正しく認識するとは限らない、ということにも、注意が必要です。
言葉の定義の違いは、ロジカルシンキングを行っていくうえで、自分で思考する際にも、人に伝える際にも重要なので、普段から意識しておきましょう。
バイアス(先入観)の具体例・種類
ここでは、人間が陥りやすい代表的なバイアス(先入観)の具体例・種類の概要を説明します。
・正常性バイアス
正常性バイアス(先入観)とは、多少の異常事態が起こっても、それを正常の範囲内としてとらえ、心を平静に保とうとする働きのことです。
自分にとって都合の悪い情報を無視し、自分は大丈夫と思い込んでしまいます。
・確証バイアス
自論に都合の良い情報以外を排除し、自分に都合の良い情報だけを取り入れ、それにより自論い対する自信を強め、バイアス(先入観)が補強されることです。
・代表性バイアス
ある特殊な事柄から全体を類推して誤った思考をしてしまいます。
珍しい事柄を一般化してしまい、ごく一部の事例を常識だと思いこんでしまいます。
・自己奉仕バイアス
これは、自分に甘く、他人に厳しい評価をしてしまうバイアス(先入観)です。
自分が成功した時は自分の実力だと思い、何かが失敗した時は運が悪かった、と思うような感じです。
逆に、他人が成功した時は運だと思い、失敗した時は実力だと思う、といった具合です。
・利用可能性バイアス
利用可能性バイアス(先入観)とは、思い出しやすいことを過大に評価してしまうバイアス(先入観)です。
例えば、自分にとって印象に残ったことは思い出しやすいため、それによって思考が歪められることです。
・後知恵バイアス
物事が起きてから、それが起きると分かっていたと思い込むバイアス(先入観)です。
物事が起きた後には、その原因が分かる場合が多いです。
その原因を見て、その結果が思考によって導き出せたはずだ、と思い込んでしまいます。