「風が吹けば桶屋が儲かる」は正しいか?

「風が吹けば桶屋が儲かる」

 

は、ある事象の発生により、一見すると全く関係がないと思われる場所・物事に影響が及ぶことの例えです。

 

可能性の低い因果関係を無理矢理つなげてできた、こじつけの理論・言いぐさを指すのに使うこともあります。

 

 

「風が吹けば桶屋が儲かる」とは、

 

1.風で砂ぼこりが立つ

 

2.砂ぼこりが目に入ることにより、盲人が増える

 

3.盲人は三味線を買う(目が見えなくても三味線弾きの仕事はできるから)

 

4.三味線の皮を張るのに猫の皮が必要になり、猫が殺されて減る

 

5.猫が減れば鼠が増える

 

6.鼠が増え、かじられる桶が増える

 

7.桶の需要が増え桶屋が儲かる

 

という論理展開で、江戸時代の浮世草子『世間学者気質(かたぎ)』巻三(無跡散人著、明和5年、1768年)が初出だそうです。(wiki調べ)

 

この「風が吹けば桶屋が儲かる」について、演繹的に正しいかどうかを検証してみましょう。

1.風で砂ぼこりが立つ~「風が吹けば桶屋が儲かる」

1.風で砂ぼこりが立つ

 

についてですが、砂ぼこりを立たせる原因となるのは、風だけでしょうか?

 

ある情報の正誤を判断するためには、

 

その情報が正しいか、

 

その結果となるのはその原因でだけか、

 

それぞれの原因の結果への影響力はどれくらいか、

 

の3点を常にチェックしなければなりません。

 

砂ぼこりを立たせるのに、風が原因である確率が低かったら、「風で砂ぼこりが立つ」の全体に対する影響度合いが低いです。

 

風以外には、地震(空気の流れではなく、地面の振動による砂の動き)や磁石(砂中に含まれる砂鉄を引き寄せることによる砂の移動)などが考えられます。

 

しかし、砂ぼこりを立たせる原因としては、これらよりも、はるかに風の影響力が強いでしょう。

 

ですので、砂ほこりが立つ原因としては、風がほとんどで、その他の要因は無視できるほど小さいと考えてよく、

 

1.の風で砂ぼこりが立つ、はほぼ正しいと言うことができます。

2.砂ぼこりが目に入ることにより、盲人が増える~「風が吹けば桶屋が儲かる」

2.砂ぼこりが目に入ることにより、盲人が増える

 

についてですが、これは砂ぼこりの程度によるでしょう。

 

目に見えないレベルの砂ぼこりの起ち方ならば、用心することはできません。

 

が、目に見えるレベルの砂ぼこりの立ち方ならば、砂ぼこりが目に入ることを用心する人が増える可能性が高いです。

 

砂ぼこりで目に対する異物の関心が促進されれば、砂ぼこり以外の目に害となる物質の目に対する悪影響が減るため、砂ぼこりが立たない場合よりも、盲人が減ることが考えられます。

 

したがって、ある程度までの砂ぼこりならば、立てば立つほど失明させる確率は上がるが、それ以上の目に見えるような砂ぼこりの場合は、盲人が減る確率が高いかもしれません。

 

よって、砂ぼこりがより多く立つようになっても、盲人が増えるとは言えません。

3.盲人は三味線を買う~「風が吹けば桶屋が儲かる」

3.盲人は三味線を買う(目が見えなくても三味線弾きの仕事はできるから)

 

についてですが、盲人の三味線の選択率を考慮しなければなりません。

 

盲人となった人が、どれくらいの割合で三味線弾きという職業を選択するのか、という問題があります。

 

江戸時代なら、ある程度、この因果関係は成り立つと言えるかもしれません。

 

盲人が増えることによる三味線の購入数の増加は、かなり成り立ちそうです。

4.三味線の皮を張るのに猫が殺されて減る~「風が吹けば桶屋が儲かる」

4.三味線の皮を張るのに猫の皮が必要になり、猫が殺されて減る

 

についてですが、三味線の皮を張るのには、猫の皮以外では駄目なのか、という問題があります。

 

猫が減ってきたのに気づいた人が、猫以外の皮を使うことに誰かが気づき、猫皮以外の皮が使われるようになるかも知れません。

 

また、猫が減ってくると、猫皮の価格が高騰し、猫皮を用いた三味線が効果になり、盲人の三味線という楽器の選択率が低下するかもしれません。

 

三味線の需要が増えるからと言って、単純に、猫の捕獲量も増えるとは言えません。もしかしたら、減るかもしれません。

 

短期的に見れば猫が減るかもしれませんが、上記の対策処置が早く行われれば、猫は増える可能性が高いです。

5.猫が減れば鼠が増える~「風が吹けば桶屋が儲かる」

5.猫が減れば鼠が増える

 

についてですが、まず、猫以外に鼠を主に食べる動物がいないかを考える必要がありますね。

 

そのような動物が存在するなら、一概に猫が減っても、鼠が増えるとは言えません。

 

例えば、猫のライバル関係にある動物Xが存在し、動物Xも鼠を主食とするならば、猫が減っても、動物Xが増えるだけで、鼠の増加につながらないかもしれません。

 

 

また、猫が減る、という現象について、その前提を考えてみてください。

 

前提条件として、風で砂ぼこりが立つ、というのがありましたよね?

 

この「風」という部分に着目してみると、風が吹くことによって、鼠が減少することも考えらえます。

 

風で砂ぼこりが立ち、人間が失明して盲人となるのなら、鼠が失明して「盲鼠」となることも、十分に考えられます。

 

失明および、視力の低下により、外敵から襲われた時の回避率が低下し捕食されやすくなり、死亡率が高くなることも考えられるでしょう。

 

以上より、猫が減るからと言って、鼠が単純に増加するとは言えません。

6.鼠が増え、かじられる桶が増える~「風が吹けば桶屋が儲かる」

6.鼠が増え、かじられる桶が増える

 

についてですが、これも、5と同様に、「風が吹けば」という前提条件も含めて論理的に思考する必要があります。

 

この前提条件をもとに、これまでの論理展開が存在するのですから。

 

風が吹けば、5の考察でも述べたように、失明および視力低下をきたす鼠が当然増えるでしょう。

 

したがって、鼠が増えたとしても、それがどんな鼠かによって結果は変わります。

 

健康体の鼠が増えたならば、かじられる桶が増えるかもしれませんが、砂ぼこりにより、目に障害のある鼠が多いならば、桶までたどり着きにくくなることが考えられ、かじられる桶は増えずに、減るかもしれません。

 

 

また、鼠の種類にもよるでしょう。

 

鼠の中にも、主な感覚器官に優劣があるはずです。目をメインに使う鼠や、耳をメインに使う鼠、という違いが存在する可能性があります。

 

そうなると、風による砂ぼこりの影響に違いが出てきます。目をメインに使う鼠は影響が大きいかもしれませんが、そうでない鼠なら影響は少ないでしょう。

 

以上のように、鼠が増えたからといって、かじられる桶が増えるとは限りません。

7.桶の需要が増え桶屋が儲かる~「風が吹けば桶屋が儲かる」

7.桶の需要が増え桶屋が儲かる

 

についてですが、これも確かなことは言えません。

 

盲人が増えたことにより、桶の需要が増える、ということの前提に、三味線の需要が増える、という前提があります。

 

三味線弾きを行う人の人口が増えるため、その三味線の音色をお金を払って聴く人口も当然増えると考えられます。

 

そうなると、桶を買うのにお金が回らず、かじられた桶をそのまま使う人たちも出てきそうです。

 

また、盲人の三味線弾きが増えることにより、三味線ブームが巻き起こり、三味線を購入する一般の人も増えるかもしれません。

 

すると、これまた桶代に回す金が減りそうです。

 

桶の需要が増えたからといって、必ずしも桶屋が儲かるとは言えないのです。

「風が吹けば桶屋が儲かる」は正しいか?

「風が吹けば桶屋が儲かる」は正しいか?ということについて、

 

これまで各段階で論理的に考察してきましたが、結論としては「不定」

 

です。

 

上記の7つのうち、因果関係の結び付きが高いと言えるのは、1と3ぐらいで、その他の要素については、確かなことは言えません。

 

ためしに、上記の7つのそれぞれが成り立つ確率を、1と3をそれぞれ90%、その他の5つを50%として、フェルミ推定(概算)してみましょう。

 

すると、

 

90%×90%×50%×50%×50%×50%×50%=2.5%

 

です。

 

「風が吹けば桶屋が儲かる」が正しくなる確率は、2.5%で、正しいとはとても言えません。

 

 

このテーマで私が言いたかったことは、たくさんあるのですが、メインは次の二つです。

 

一つ目は、論理は、少しでも間違っていると、積み重ねると大きな間違いになる、ということです。

 

上記の計算でも分かると思いますが、80%の確率で正しい前提情報を、例えば10個つなげると、わずか10%になってしまいます。

 

このように、演繹的に論理を積み重ねていく場合は、わずかな論理的な見落としでも、してはいけないということです。

 

常に、因果関係が正しいかその結果がもたらされるのはこの場合だけか、ということを意識する必要がある、ということです。

 

 

二つ目は、このように演繹的に思考していく時には、前提条件は常に意識しなければならない、ということです。

 

今回の例では、5.猫が減れば鼠が増える で、猫が減れば、鼠が増えるかもしれないが、その前提条件の「風が吹けば」で鼠が減るかもしれない、と書きました。

 

このように、前提条件は、常に関わってくる、ということです。

 

「猫が減れば鼠が増える」という部分だけを見れば、成り立つ確率が高そうですが、その前提条件を考慮して考えると、そうとも言えません。

 

多段階の演繹を繰り返した際には、前提条件を見落としがちになるので、特に注意が必要です。

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