ワーキングメモリと長期記憶

ワーキングメモリ(Working Memory)とは認知心理学において、情報を一時的に保ちながら操作するための構造や過程を指す構成概念のことです。

 

ワーキングメモリについては、その用語の使用法もあまり厳格ではなく、また、メカニズムもよく分かっていません。

 

短期記憶との違いは、能動的に、知識を使うかどうか、という点です。

 

簡単に言えば、情報を短時間、記憶して、それを使いこなすような能力だと思ってください。

 

 

 

皆さんの周りに、高学歴で、ペーパーテストだけはできるけど、全然仕事ができない、という人はいませんか?

 

そのような人が存在する主原因が、ワーキングメモリと長期記憶に関係しているのです。

 

 

学校の勉強では、試験日というものが決まっており、それに向けて長時間、時間が与えられます。

 

その日までに向けて、試験範囲の内容を、何度も、何度でも、復習することができます。

 

学校のテスト、学歴で測ることのできる能力は、長時間かけて、大量のことを記憶する、という能力です。

 

しかし、これができたらと言って、ワーキングメモリが優れているとは限りません。

 

短時間で物事を理解し、それをすぐに使いこなす、という能力は、長時間かけて、大量のことを記憶する、という能力とは全く異なります。

 

 

 

医者で具体的な例を挙げてみましょう。

 

医者、といったら、一般には頭が良い人たちばかりだと思われていますが、実際は全くそんなことはありません。

 

同じ仕事を何度頼んでも完全にできず、ミスばかりしている医者は本当にたくさん見られます。

 

長時間かけて大量の知識を覚えることができても、口頭でちょっとした作業を頼んだら、すぐに忘れてしまい、ミスばかりしている医者がたくさんいるのです。

 

速度が要求される医療現場では、口頭で指示内容をいちいちメモにとって後で確認する、ということはできません。

 

ですので、ワーキングメモリがかなり重要なのですが、この力が非常に低い医者がたくさんいるのです。

 

彼らにとっては、きちんと文章化されたマニュアルを何度も復習しないと、新しい概念を使いこなすことができないのです。

 

長期間、記憶を維持する能力と、短時間にある程度の量の知識を覚えてそれを使いこなす能力とは、全くの別物であって、

 

このような人たちは、自分が体験してきたことと、ほんの少しでも異なる事態になると、上手く対応することができません。

 

さらに、このような学校の勉強ばかりしてきた人は、記憶の方法が、初めから何回も繰り返すこと前提とする方法であるため、

 

新しいことを一度で記憶する能力が低下している可能性もあります。

 

 

長期記憶がそれほど優れていなくても、ワーキングメモリが非常に優れている人は沢山います。

 

一方、長期記憶が優れていないという欠点は、コンピュータによって、そのほぼ全てを補うことができます。

 

したがって、学校のペーパーテストがあまりできなくても、ワーキングメモリが優れており、医者に向いている人は沢山いるのです。

 

長期記憶が優れていても、その場その場で、新しい概念をすぐに理解し、使いこなせるかは別物なのです。

 

 

今回は、医者を例に挙げましたが、その他の職業でも、即時の記憶力が必要とされる職業はたくさんあります。

 

そのようなワーキングメモリが必要とされる職業では、ワーキングメモリの能力も評価基準・採用基準に入れるべきでしょう。

 

学校のお勉強で使う記憶力と、ワーキングメモリの違いを、より多くの人が理解し、本当に能力のある人が正しく評価される社会になって欲しいですね。

関連ページ

間違えやすい日本語で抽象化の練習
間違えやすい日本語を通して、抽象化の練習をしてみましょう。抽象化することで、飛躍的に知識の増加速度がアップします。
頭が良くなる本の選び方
頭が良くなる本の選び方について。思考能力を鍛えていくために、本は非常に有効です。頭を良くするための本の選び方を徹底解説。
ニュースを見るのは後回し
ニュース(新しい情報)を手に入れるのが好きな人がいますが、ニュースは見てもほぼ意味がありません。情報には優先順位があります。ニュースを見るのは後回しにした方が良いです。
速読の弱点
速読の正しい使い方について詳しく解説。速読には大きな弱点があります。したがって、正しい速読の使い方を知らなければ、いくら本を読んでも、全然頭が良くなっていかない、ということになってしまいます。
「メモを取る」ということについて
知識を覚える時などに、「メモを取る」ことをしている人がいると思いますが、やみくもに全ての知識をメモにとっては駄目です。メモを取るべき知識と、そうでない知識があるので、注意するようにしてください。
知識を増やすよりも検索能力を鍛えよう
知識を増やすよりも検索能力を鍛えましょう。知識を得ようと努力している人が多いですが、知識量をいくら増やしても、実はほとんど何の意味もありません。本当に必要なのは検索能力です。
抽象化の具体例 「ガスのにおい」
「知識」について。知識の抽象化について、ガスのにおいという知識を、いかに抽象化するか、ということについて具体的に解説。
体験学習の罠
体験学習について。体験学習はよくもてはやされていますが、学習という面においては、非常に効率が悪いです。体験学習のメリット・デメリットを論理的に分析していきます。
学校教育の問題点 知識の選別について
学校教育の問題点・知識の選別について解説。知識を選別することなしに頭に詰め込めば良いので、間違った知識と、正しい知識を識別する能力が育たない。
情報ソースの重要性と問題点
情報ソースの重要性と、問題について解説していきます。情報ソースがいかに重要か、情報ソースを把握する能力が現在の教育ではいかに疎かにされているかを解説します。
インプットとアウトプットについて
インプットをアウトプットについて。アウトプットが大事、とよく言われますが、実際はインプットも大事です、インプットとアウトプットについて、どう考えていけばよいかを解説していきます。
馬鹿は固有名詞を覚えたがる
固有名詞について。馬鹿な人間が固有名詞を覚えたがるメカニズムと、本当に必要な記憶すべきことは何か、ということを解説。フォンレストルフ効果の具体例を含む。
国語教育の謎
国語教育の謎について。国語では、何を言っているか分からないような難解な文章を読む訓練をしますが、これは非常に無駄が多いです。本当に行うべき国語教育とは何か?
英語教育の謎
英語教育の謎について、英語教育および、一般的な学問の